読んだ。 #つむじ風、ここにあります #木下龍也
読んだ。 #つむじ風、ここにあります #木下龍也
・つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる
・自販機のひかりまみれのカゲロウが喉の渇きを癒せずにいる
・たくさんの孤独が海を眺めてた等間隔に並ぶ空き缶
・自転車に空気を入れる精密な自分の影に涙しながら
・プールから飛び出す癖がなおらないイルカを辞めて5年経つのに
・生前は無名であった鶏がからあげクンとして蘇る
・海の嘘気付かぬままに釣り糸を空へと垂らす老人の群れ
・あの羽は飾りなんだよ重力は天使に関与できないからね
・バラバラになった男は昨日まで黄色い線の内側にいた
・右利きに矯正されたその右で母の遺骨を拾う日が来る
・いくつもの手に撫でられて少年はようやく父の死を理解する
・全体としては死んでいるじいちゃんの一部を生かすためのシステム
・さざ波が私語をさらってゆくまでを目を閉じたまま先生は待つ
・お風呂場に新聞紙敷く「お父さん、僕は補欠になるんやろうか」
・いたいのが飛んでゆきますソマリアの少年兵の人差し指へ
・飛び降りて死ねない鳥があの窓と決めて速度を上げてゆく午後
・傷付ける音を発した声帯をざぶざぶ洗うファンタオレンジ
・もう君を動かす人は死にました折り畳み式自転車を折る