読んだ。 #線と管をつながない好文×全作の小屋づくり #中村好文 #吉田全作

読んだ。 #線と管をつながない好文×全作の小屋づくり #中村好文 #吉田全作
 
岡山で牛師・酪農家をされている依頼者の吉田全作さんと、建築家の中村好文さんが建てた、電線、上下水道管のない小屋(家)についての本。
 
太陽光発電のシステム。
23 電灯用に300w、便所のシステムに50w、バイオ・ジオ・フィルターと池の循環用ポンプに50w、フランスからキットで購入した薪窯で焼くパン作りに必要な冷蔵庫と冷凍庫の合計で500w、雨水をため込んだ地下タンクから水道に水を送るポンプに200wと言ったところです。煮炊きには冬の牧のクッキング・ストーヴ、夏は七輪で凌ごうということで、とりあえず0w。どれも1時間当たりの電気使用量ですから、稼働中だけしか電気を使っていないということを考えれば、1日の使用料を最高5kwとして進めてよいだろうと見積もりました。一般家庭の電気使用量が、夏場エアコンを使用する世帯で20kw、その他の季節で10kwということだそうですから、妥当な数字だと判断しました。
 
 結局、最大4.8kwの発電が可能な太陽光パネルを乗せることになりました。その発電量は、太陽光の角度と天候で決まります。夏場で最大3.5kw、冬場で1.5kwといったところです。
 蓄電するものとして、鉛バッテリーやリチウム・イオン・バッテリーなどがありますが、今でもその中で一番安価な蓄電設備は鉛バッテリーです。現在は、位置エネルギーを得るために重いものをモーターで上に持ち上げ、使用するときにゆっくりと落とすことにより電気を作るという仕組みも考えられていますが、その当時は考えもしなかった蓄電方法でした。
 結局、フォークリフト用の大きな鉛バッテリーに蓄電することになりました。価格も安価で、リチウム・イオン・バッテリーに比べて同じ蓄電要領であれば、1/5ほどの価格で購入可能です。しかも、希少金属を使わない鉛バッテリーは再生可能。メンテナンスさえ真面目に(ここが重要ですが)していれば最低10年間は使用できるそうです。太陽光発電は天候に左右されるので、発電が期待できない雨の日が続くことを考慮しなければなりません。最長5日間雨がつづことを想定して、最大28kw(一日の使用料5kw✕5日間)の蓄電ができる鉛バッテリーを選びました。鉛バッテリーを作っているその工場でも蓄電に使って工場を稼働させていると聞き、安心して使用することにしました。
 太陽光の発電電圧は12vで、それを蓄電池に充電するために48vに変換し、発電量を制御するためにコントローラー、蓄電池からの電圧を48vから100vと200vに変換するインバーターという装置が必要です。
 
104 この小屋で使ったソーラーパネルは施工してくれたJ-BUILDの取引のあるメーカーの製品にしました。ドイツのQセルズというメーカーで、屋根に無理なく、無駄なく載せられるだけ載せました。20枚載っていて能力は4.8キロワットです。工事費込みで130万円ほど。
 
106 フォークリフト用バッテリー。新品で1台70万円。ただ、すごく思いから運賃が10万円ぐらい。
 バッテリーって蒸留水を補充してやらないと減りますけど、補充をこまめにやれば10年ぐらいは使えるらしいんです。それとバッテリーは再生できるので、その会社に持っていけば再生してくれるっていうし・・・。
 
 
太陽熱温水器で雨水を温めて風呂に入る方法
26 太陽熱温水器は、現在発展途上国で普通に使われている真空管のものにし、冬場に充分温水が得られないことも考え、薪ボイラーも併用することにしました。ところが、嬉しい誤算がありました。真空管式は、太陽の熱を無駄なく取り入れ、その上に設置した保温タンク(200リットル)に最高85度のお湯を貯められるので、冬場でも晴れていれば40度以上のお湯が出ることがわかりました。結局、薪ボイラーは現在まで数回しか使っていません。
 
96 この真空管タイプの太陽熱温水器はこの小屋を施工してくれたJ-BUILDの現場監督の蜂谷幸昌さんが探してくれました。福山市にある寺田鉄工所で作っている「熱交換式太陽温水器SUNTOP」という製品名で、型番はST-195/24F-Yです。設置の工事費は別にかかりますが、値段は30万円ぐらいでした。熱源が太陽ですから電気とか使わなくて済むし、お勧めですね。
 
好文 いつだったか、全作さんがこの温水器は夏場に水温が80度ぐらいになると安全弁が働いて自動的に注水して温度を冷ます仕組みになっているって話していましたね。
 
全作 そう、それはいいんですけど、温水を冷ますために自動的に注水するので、水をけっこう使うんですよ。だから、ホラ、夏場に晴天続きで雨が降らない時があるでしょう、ああいうときは水不足になる傾向があるんです。本当は夏場は風呂でもシャワーでもお湯の温度はぬるめでもいいのに、夏場ほど熱いお湯になっちゃって、それがちょっと困る(笑)。
 
好文 夏場は温水器の表面を銀色のパネルかなんかで簡単に覆う方法を考えないといけないですね。ただ温水器は小屋の屋根のてっぺんですからね。いくら全作さんが北大の元・探検部でも還暦を過ぎてるから・・・どうかなぁ(笑)。
 
全作 ああ、だからこの温水器は地面に置いているところが多いのかもしれない。点検したり、メンテナンスしたりしやすいから。
 
 
・雨水を濾過して飲料水にする仕組み
26 では、その水はどのように調達すればよいのか。井戸も沢もない丘の上ですから雨水に頼るほかありません。樋からの雨水をドイツ製のステンレスフィルターを通し、温度変化の少ない地下に設置した2トンの水タンクに貯めることにしました。その水をマイクロファイバーを使った濾過装置を通してポンプで水道の蛇口に送るのです。そのまま飲み済みとしても利用可能な濾過装置を見つけたことも幸いでした。
 
70 ろ過装置/ポンプに直結して取り付ける雨水濾過装置。この装置によって、小屋で使用するすべての水は濾過されて飲料水になる。この装置は本文と対談にもたびたび登場する全作さんの小屋の立役者で、(株)十字屋と東レ(株)が共同開発したスグレモノ。
 
株式会社十字屋 (十字屋グループ)
井戸水ろ過装置 TC-12J
除濁、除菌、逆洗機能搭載 井戸水膜ろ過装置

 
93 竪樋に取り付けるドイツWISY社製の集水器。簡素な仕組みで枯れ葉やゴミを取り除いてくれる。シップスレインワールド(株)扱い。
 

 

 
94 ポンプ
カワエース250
 
95 全作 僕が自宅とチーズ工場床の小屋で使っている濾過装置は岡山県真庭市にある「株式会社 十字屋」と「東レ株式会社」が共同開発したTORAY TC-12Jという製品です。この装置は水の汚れ具合によって、鉄分を取り除いたり、硫黄の臭みを消したりするオプションが色々つけられるようになっていますけど、標準品は40万円ぐらいだったと思います。
 
・ガスを使わずに調理する七厘レンジやキッチンストーヴ
26 料理は薪のクッキング・ストーヴと七厘ですることにしました。クッキング・ストーヴには400度にもなるオーヴンもついています。七厘レンジは好文さんの考案で、設置する3個の木製の五徳といい、換気のための工夫といい好文さんの真骨頂です。
 
110 このキッチン・ストーヴはイタリアのNordica社の製品で、Rosetta Biiというものです。値段は輸送費と通関税は別で、18万円ほどでした。
 
 
・匂いもなく快適なコンポストトイレ
28 便所はおが屑や落ち葉などの堆肥を混ぜながら用を足す仕組み。ハンドレバーでかき混ぜて、頃合いを見て堆肥の中に混ぜ込みます。ただ、外便所ですから堆肥舎にも近く、こまめに管理ができる利点はあるものの、小屋の中に置くと小蠅など虫が湧く原因になりそうだと思いました。外便所を作ろトキハ真夜座図夕日を眺めながら用を足せる四井方式を採用するのは間違いありませんが・・・。
 思案の末、小屋にはカナダで実績のある便器と排せつ物などのコンポストが別々に設置できるシステムを使用することにしました。排泄物は管を通って外にあるコンポストに真空装置によって運ばれます。飛行機のトイレと同様の仕組みです。コンポストに入ったものは、ときどき発酵種(発酵菌や発酵堆肥)を入れて堆肥レバーを引き混合する仕組みです。常時換気ファンが回っていて水分が蒸発し匂いもしません。
 
101 その仕組みは飛行機のトイレを思い浮かべてもらったら分かりやすいんですが、用を足した後、ボタンを押すと蓋が開いて真空パイプで発酵槽へズバッと一直線。発酵槽には、手動の攪拌機がついていて、数日に一回動かせば中で発酵して堆肥になるって仕組みです。45年の歴史があって耐久性にも問題はありませんね。使用人数や家の仕組みによって何種類かありますけど、どれも70万円前後でおが屑便所と同じぐらいです。
 
「エンバイオレット」という名前でカナダの会社が1977年から製造している便所のシステムです。新潟県にあるバイオハウス(https://www.suisen-bio.com/)という会社が日本で販売していますから、メンテナンスも大丈夫です。
 
 
・食器を洗った排水を傾斜土槽バイオ・ジオ・フィルターを通して、微生物によってキレイにしてからビオトープに流す仕組み
30 四井さん宅でもう一つの大きな収穫が、バイオ・ジオ・フィルターでした。人の暮らしから排出されるのは排泄物だけではありません。台所や風呂などの雑排水もその一つです。バイオ・ジオ・フィルターは、深さ50cm幅50cmほどの溝を毎日の排泄量に応じた長さに掘り、そこに瓦くずなどの微生物の住み着きやすい多孔質のものを敷き詰めて浄化する仕組みです。バイオ・ジオ・フィルターが流れる先には小さな池も作りました。瓦くずの中では、クレソンや空心菜が育ちます。そして、浄化された最後のところではワサビも育つと教えられましたがそれはまだ成功していません。
 行けには、鯉の稚魚を放流したせいか鷺が飛来、蒲の種を運んだのでしょう、今では池は蒲で溢れ、大きな鯉が泳ぎまわりモリアオガエルが生息するビオトープとなっています。ただし、台所の排水は富栄養用なので、一旦縞ミミズに微生物や食品くずを食べさせてからミミズの排泄物をバイオ・ジオ・フィルターに流しています。縞ミミズは一日でその体重の三倍もの細菌や有機物を食べるそうですから、たくさん飼えばかなりな量が処理できます。
 
62 台所で水を使えば「排水」が必要になります。小屋の排水システムは北杜市の四井さんの家で完璧に機能することを確認済みの「傾斜土槽」と呼ばれる方式です。「傾斜土槽」は土を入れた箱を何段か重ねたもので、排水はその層を通り抜ける仕組みです。排水に含まれている有機物を箱の中の微生物が食べて分解してくれるのですが、微生物が増えすぎるとフィルターが目詰まりを起こすので、箱の中でミミズを飼って増えすぎた微生物を食べてもらい水道を作る役割をさせるところや、ミミズならどの種類でもよいのではなく微生物が大好物、しかも大食いの「縞ミミズ」でなければならないという話など、ぼくは「つくづく面白いなあ」と思います。
 そして傾斜土槽を通り抜けた水は「水を浄化する水路(バイオ・ジオ・フィルター)」を通ってビオトープ(池)に流れ込むことになるわけです。
 
97 傾斜土槽はもともとは四電技術コンサルタントの生地正人さんという方が開発されたシステムで「花水土」という名で普及していました。現在のタイプは土の層にするのではなくて、一辺が3cmほどのサイコロ型のスポンジを編みの袋で包んで、そのまま発泡スチロールの容器に入れたものを5段ぐらいに重ねて作ります。

 
99 実際にバイオ・ジオ・フィルターを作る費用は、規模にもよりますが、一般家庭用なら大体30万ぐらいだそうです。
 
 
・シャワー袋
80 この時使っていた簡易シャワーがなかなかのスグレモノで・・・といっても大層なものではなく、幅40cm・長さ60cmの塩化ビニール樹脂( PVC)製の袋にシャワーヘッド付きの短いホースがあるだけの代物です。このビニール袋(アメリカ製で「ソーラー・シャワー」という名前でした)に水を入れて日のあたるベランダなどに出しておくと太陽熱でお湯になります。簡単にいうと日向水ができるわけですね。復路には水温計がついているので適当な温度になったら、袋を2mぐらいの高さに引っ掛けて、その下でシャワーを浴びることができるのです。ビニール袋の表の面は太陽熱を吸収しやすいように黒色、背面は銀色になっています。カンカン照りの夏は黒色面の方を上にしておくと短時間で水温が50度以上になることがあるので、その時は銀色面を上にします。お湯が熱くなり過ぎたと思えば水を差し、ぬるいなと思ったらヤカンで沸かしたお湯を入れて温度調節します。
 このビニール袋の容量は5ガロン(約2リットル)で、これが1人分ですから、髪を洗い、身体全体を洗うためには、どこからどんな順序で洗いはじめるか、まず、作戦をたてなくてはなりません。